嵐がくる
陣痛開始から3時間、分娩室に入ってから38分というスピード出産で
我が子に会えた私たち夫婦のもとに
嵐がやってくる。
股に違和感というか痛みを覚えたので先生に申告したら
「いま赤ちゃんが通ったばかりだから違和感があるのかもね。少し血腫があるけど、時間とともに引くと思うから、2時間ほど様子を見ましょう」と言われる。
2時間分娩室でゆっくりしてたけど、違和感は強い痛みに変わる。
後産はすんなり終わり(胎盤を見せてもらったけど、生レバーみたいだなーって印象)、おなかの中はきれいさっぱり。
強い痛みが引かないので、先生に診てもらい、
膣壁血腫をつぶし?切って、縫ってもらった。
この時の麻酔が効いていなくて(本当は効いていたのかもしれないけど、当時の私には効いていないような気がしていた)
メスで血腫を切る感触も
針が刺さる「ちくっ」も
糸が通される「すーっ」も
しっかり感じ取れ、地獄のような痛みを感じる。
痛みに耐えきれず、陣痛時とは比にならないほど発狂する。
でも、処置している股は動かしてはならないという意識が働き、
発狂するけど、下半身はがんばって動かさないように耐える。
でも痛い。
痛い。
痛い。
怖い。
寒い。
怖い。
痛い。
脚が震えてきた。
顎がガクガクして歯がガチガチしてきた。
怖い。
怖い。
寒い。
怖い。
血圧は乱高下し、
一時、血圧が70/30くらいまで下がる。
先生が険しい顔で近隣の大きな病院だかレスキューに連絡。
でも、受け入れ先が見つからず。
最終的には
「スーパー母体搬送※というシステムでN病院へ転院して治療しましょう」と。
※東京都で2009年から運用されているシステム。救命を要する妊産褥婦を”必ず”受け入れるシステム。
そこから救急車に乗ったレスキューの人が到着し、
あっという間にストレッチャーに乗せられ、
「●●ちゃんはしっかりココでお世話するから、安心して治してきてね。がんばってね!」と
息子を抱いた病院スタッフに見送られ、
院長先生と、旦那さんと救急車でN病院へ。
寒さといろんな不安と恐怖と「ここで意識飛ばしている場合じゃない」って気持ちで
意識を保つ。
救急車の中では先生と旦那さんとレスキューの人がおしゃべりしているので、
そこに混ざってみる。
「体力減るから無理してしゃべらなくていいよ」と先生に言われ、周りの人の話を聞く。
内容はもう忘れた。
産院出発からおよそ30分後、
N病院に到着し、産院の院長先生が救急救命のコーナーで待ち構えていた先生に状況を手早く引き継ぎ。
同時に出血箇所の特定をするため、問診、内診、CTを手際よく進めていく。
私はこの時スーパー母体搬送やN病院についての知識が何一つなかったので、
問診に答えつつも、先生に「こういう産婦はたくさんいますか?」と聞いていた。
そうしたら、「たくさんいるよ。こういう事態には日本一強いつもりで仕事しているから、安心して。僕たちは、コウノドリみたいな存在だよ」と返答があり、安心する。
CTの造影剤にアレルギー反応を起こし、喉がかゆくなり、鼻がつまり、まぶたや唇が晴れていく。
呼吸がしづらくなり、呼吸器を装着される。
もう一度膣壁血腫を切って縫い直すといわれ、
産院での痛みを思い出し、パニックを起こす。
処置室にパニックを落ち着かせるための音楽が流れ、ナースが手を握ってくれて、先生に背中に打つ麻酔(無痛分娩の麻酔と同じかな?)を打ってもらったら、
だんだん感覚が遠のき、なんとなくジンジンしびれる感じだけが残るけど、
気持ちが落ち着いてくる。
順番は覚えてないけど、点滴を行い、血腫をサクサク切って、縫ってを行い、左手の手首の動脈に輸血を行い、処置が終わる。
EICUに運ばれる。
EICUの個室では
人工呼吸器、数本の点滴(オキシトシンと補液だったかな?)、尿道カテーテルなどたくさんの管に繋がれ、24時間体制でナースが1人つきっきりでそばにいてくれる。
一息ついたところで、入院の手続きを終えた旦那が病室に来た。
ずっと自分の子御tばかりで気が付いていなかったけど、彼の顔は青ざめ、ぐったりしていた。
私は…CT造影剤のアレルギー反応で見るも無残な顔にはれ上がっていた。
負け試合後のボクサーみたいにボコボコにはれ上がってる感じ。
旦那さんはそんな私の顔をみてギョッとしたはずだけど、
私が不安に思わないように平静を装ってくれていたと思う。(後から聞いたらやっぱりそうだった)
そして、携帯持ち込み禁止なので、私のスマホは旦那さんが持ち帰る。
専属ナースがいたけれど、
時間もわからず、誰とも連絡が取れず、旦那の電話番号も暗記していないので、なんとも心細い。
初めての搬送、入院だったことも心細さを助長していたのかも。
背中に打ってもらった麻酔はしっかり効いて、
麻酔の効果が切れるまでは下半身不随。
患部の出血の状況などを確認する時や着替えなどの時に、動かしたいのに腰がまったく動かない。
脚も足の指も動かない。
下半身不随ってこんな感じかーと妙に感心しつつ、不便を実感。
一晩ここにいて、落ち着いたら産院に戻りたかったけど、
また出血したら?など心配も尽きなかったので、このままN病院にお世話になることに。